3日、金融庁は老後資金として2,000万円の貯蓄が必要であることを試算する報告書をまとめた。この金額は年金を受給した上でなお必要となる額であり、年金だけで老後を賄えないことを政府が明確に示したことになる。

年金は高齢化で働けなくなったり障害を負って収入がなくなった人を社会として保護するために始まった制度である。したがって制度の趣旨としては生活保護に似ているが、生活保護と違うのは若いうちに年金を払い、自らが積み立てたお金が返ってくるという点にある。

昭和36年の制度開始直後は高度経済成長期でもあったため順調に給付額も伸びたがその後の不況と人口構成の急激な変化で若い世代の負担が急増、明らかにいびつな制度となっている状況だ。

1940年生まれと2010年生まれでなんと6,000万円近い格差が・・・

引用したグラフの通り、現在の現役世代にとってはひたすら払い損でしかない。

加えて1940年に生まれた世代は2000年過ぎくらいまで現役で働いたことになるだろうが、その間日本の地価・株価は上がり終身雇用で職も安定し、まともに働いた人なら持ち家と車、それなりの貯金と独立した子供がいるような世代である。

一方現在は終身雇用も崩壊しつつあり一部の勝ち組とそうでない人の格差が拡大している。そういったものを勘案すると、実質の格差はもっと大きいものになるだろう。

少子高齢化の解決のめどが見えず平均寿命も伸びていくと、年金制度が維持できないのは火を見るより明らかだ。しかしそれでも年金崩壊はタブーで、「年金制度 破綻」で調べればいくらでも提灯記事が上がってくる。

政治家たちも年金制度の安全性を必死にアピールし続けた。

麻生太郎金融担当大臣

オレが産まれたころの平均寿命はいくつだったか、知ってるか?

47(歳)です。それが戦後は53になって、それでこのあいだまで81とか言ってたのが、100だってんだろ?

そうすると、人生設計を考えるときに100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか? 普通の人はないよ、たぶん。オレ、ないと思うね

麻生太郎金融担当大臣

いきなり100って言われて、『あと20年間ゴルフつづけられるのか』って、『そんな体力ねえな』とか『金がねえな』とか、いろんなことを考えるだろうから、そういったようなことを考えて、いまきちんとしたものを、いまのうちから考えておかないかんのですよと

要するに麻生大臣が行っているのは年金制度に頼らず自分でなんとかしろということである。まぁ現実的にはそれは事実だろう。しかし数年前までは平然と年金神話を唱え続け、年金があるから大丈夫と国民を煽っていたのに、制度の破綻が近づくと自己責任論にすり替える。少なくとも政府や年金制度に関わった人間であれば、まず国民に率直に謝罪するのが筋ではないか。

現在の若者が2,000万もの貯金を老後までにするのはほぼ不可能だといえる。というのは日本人の平均年収は下がり続けている上、同じ年収だったとしても社会保険料が急激に上がっているため手取りが大幅に減っているからだ。

2002年にボーナスからも社会保険料が天引きされるようになって以降、毎年なにかに理由をつけて手取りは減少し続けている。

筆者(鶴太郎)は零細ながら会社を経営しているから毎月社員の給与計算を行ったり協会けんぽの封筒に目を通しているが、本当に細かい刻みで年々料率が上がっている。消費税のように一般に馴染みがないから話題にならないだけだと思う。

平均年収も減少している。統計によればサラリーマン平均年収は420万円ということだが、これは一部の高所得者も含まれるからボリュームゾーンは370万円前後だろう。

そうすると現時点での計算は手取り年収300万円ほどで、30年で2,000万円貯めるには収入の20%を貯金しなければならない

政府がこうしてセーフティネットを放棄するといったい何が起こるのか。

まずすでに逃げ切りつつある世代(80代以上)とそれより下の世代の格差が放置される。すでに若い世代では親からの援助なしで生きられない家庭も多い。

その結果、実家が裕福かどうかが次の世代の家計に大きな影響を持ち、親世代の経済格差が子供の世代にも引き継がれやすくなる

また持ち家でない高齢者は本当に棄民扱いされることになるだろう。筆者(鶴太郎)の本業は賃貸管理業務だが、賃貸住宅に住んでいる80歳以上の独居老人は要注意対象として見ているし、高齢を理由に入居を断るケースも周囲に多い。

真っ当に働いていようが家もなく金もない、生まれてきた時代が悪かったという世代がこれから大量に量産されることになる。

これは時の政府の問題だけではなく、長年年金神話を唱え問題を先送りにした厚生労働省の問題である。

セーフティネットになるならともかく、現役世代はもらえないとわかっていながら支払い少ない手取りをさらに少なくしている。そんなことで経済が上向くはずもない。

未だに年金の安全神話を試算してはプロパガンダに使っているが、いい加減崩壊を宣言して前向きに次善策を練らないと本当にそこらじゅうにホームレス老人が転がっている時代が来るだろう。